日本語の不思議 表意文字と表音文字 東條英利氏連載コラム no.14
日本語の不思議 表意文字と表音文字
東條英利氏連載コラム no.14
今回は、日本人のユニークさの真意というものを文字という言語面からみていこう。実は、どの世界を見ても、言語を示す文字というのは、基本、一種類しかない。しかし、こと日本人に限っては、ひらがな、カタカナ、漢字という三種類の文字を使い分けている。中には、ローマ字と数字を加えて五種類だ!という方もいるが、実は、日本では、言語を記すために、複数の文字を使い分ける希有な国民であるのだ。
ただ、特筆すべきは、単にその種類が多いというだけの話ではない。実は、日本人は大別して二種類の文字を同時に使い分けている。それが、ひらがなを代表とする表音文字と漢字を代表とする表意文字である。漢字は、その一字一字にその意味を象ったイメージというものがある。昔、とある人材研修で、粘土を使って、感情を表現してください、というものがあったが、当然、そんな漠然したものを表現する場合、その作品は、その意味を象ったものとなる。そのため、漢字はその物事の真意を反映していることが多い。
例えば、「我」という字。これは、一見、自分を意味している漢字だと安易に理解しがちだが、この字の意味するところは思いのほか深い。実は、この「我」という字は、ギザギザした、のこぎりのような刃物と矛という武具が掛け合わさった字となる。つまり、強力な武器であると同時に、危ないものを意味するのだ。実際、「我を出す」ということは、自分を誇示する場合に使われるが、反面、「我を捨てる」といえば、それは、「我」の持つ危険性を意味するところにもなる。単純に、一人称として捉えがちの字も、その意味するところは、非常に深いものなのである。
対して、表音文字は、音を意味する。その字自体に深い意味はない。以前、中国のネットニュースで、日本にノーベル化学賞が多く、中国に取れない理由をこの文字の差とみる面白い意見がみられた。どうやら理数系の事象は、単純に数値や規則を事象として捉えるため、表意文字だとその字に対する固定観念が邪魔立てし、演算的想像力の障害になるというのだ。だから、この場合においては、表音文字の方が適しているという。
しかし、日本人は、この両者の特徴を踏まえながら、ひとつの言語として併用している。その思考は柔軟であり、複雑な表現に対応できる順応性を示しているのだ。日本人の高い順応性は、もしかしたら、こうした言語脳という観点からも証明できるのかもしれない。日本人は世界でも希有な国民であると。
(神社人運営者 株式会社カルチャージ代表 東條英利 )
東條英利氏・・1972年生まれ埼玉県出身、株式會社カルチャージ代表取締役。東條英機の直系曾孫にて、第18代目当主。日本独自の社会公益事業モデルを 模索し、神社並びに神道の存在に着目。神社を通じたカルチャー・ツーリズムを提唱し、新たな地域コミュニティと文化エンターテイメントの再生を目指してい る。
グローバルコミュニティー インタビュー 日本文化の根源は神社にあり
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