2024/11/18 21:00

『大阪を留学生パラダイスに』 エール学園 長谷川恵一理事長

特集

『大阪を留学生パラダイスに』


留学生の地域社会に役立とうという意識が大切


長谷川恵一氏 プロフィール
昭和22年生まれ。昭和44年同志社大学工学部卒業。九州松下電器株式会社入社、昭和51年、学校法人エール学園専務理事に就任。58年学校法人エール学園理事長、社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの理事をはじめ、特定非営利活動法人ミナミまちづくりフォーラム副会長、特定非営利活動法人国際メンターシップ協会代表理事としても活躍。また、所属する大阪府専修学校各種学校連合会では、文部科学省より委託を受け、実施委員長として留学生支援事業も行っている


地域に根ざし、独自の留学生支援のスタイルを確立しているエール学園理事長の長谷川恵一氏にお話を聞いた。


『就職率100%保障コース』


何とエール学園は今年より、『就職率100%保障』の特別コースをスタートした。もちろん、そのコースは厳選された学生のみが入ることを許されるが、業界初の試みとして注目されている。メンター教育を重視し,またインターンシップをフル活用した地域に根ざした実践的な教育を続けてきたからこそ、誕生したコースといえるだろう。
この学園の基本理念は、『なりたい自分、つくす自分』。なりたい自分を目指し、自己実現すること、そしてその自覚が芽生えたものが、他者の自己実現をも助けるという発想がそこにある。すなわち人は人との関係性の中で成長していくという考え方だ。現在の教育には、学歴社会が行き過ぎ、個人的な点数主義が中心になり、学びあい、お互いを高め合うという姿勢が欠けている。それが、社会に出ても消極的な学生を生み出す原因にもなっている。社会に役立つ実践教育をする専門学校では、このメンター教育によってお互いがメンターになり、学び合い、助け合うという考えがとても重要となってくる。

『地域企業でのインターンシップ』

エール学園では、教員と学生と企業担当者が一体になって、地域の企業でのインターンシッププログラムを拡大してきた。最初は、留学生を受け入れてもらうのも時間がかかったが、地道な活動が認められ、年々受入れをしていただける団体や企業も増えてきている。


学生達は、最初は経験を積ましてもらう意味を込めて、長期であっても全くの無償インターンシップとして取り組む。そして企業での勤務態度や能力が認められるとアルバイトや有償のインターンシップとつながっていく。外国人が日本社会に認められるには、まずは彼らが地域コミュニティーに貢献することが重要だと長谷川氏はいう。長谷川氏の指導もあり、インターンシップだけではなく、地域のボランテイアや清掃活動にもエール学園の学生達は熱心だ。その地道な活動のお陰で、今では留学生たちが地域の避難訓練で、高齢者の人たちの安全な場所への誘導などの大事な役目を担うまでになった。数年前までは想像も出来なかったことだ。この様に教育機関が媒介になって、企業を含む地域社会と留学生とのいい関係が続いてくれば、留学生の社会的地位も向上し、本来の意味で留学生が歓迎される社会になっていくと思う。これが、長谷川氏が目指す『留学生パラダイス』だ。

『場力』の重要性


長年留学生の生活向上に取り組んできた長谷川理事長は、大専各(大阪府専修学校各種学校連合会)の委員長としても活躍しているが、最近は、文部科学省の担当官よりアドバイスを求められることも多いという。エール学園のように地域に根ざした学校経営をしている教育機関はまだまだ少数派で、尚且つ学生の多くは留学生だということを考えると、エール学園は最先端をいっているといえるだろう。


長谷川氏は、『場力』という言葉でこの重要性を説明してくれた。『場力』とは、その土地が潜在的に持っている力をいい、その力を最大限に利用することが大切だという。『大阪』という土地には、元々遣隋使や遣唐使を送り出し、また朝鮮半島や中国大陸から多くの人たちが移り住み新しい文化を広めていったという歴史がある。
最後に長谷川氏が、いつも留学生に言い聞かせている言葉を紹介しよう。『皆さんが大阪で学ぶ、歴史的な意味を良く考えてください。そして、将来は、皆さんの母国と大阪を結ぶ架け橋となって、アジアの明るい未来を一緒に作っていきましょう。』

私も、留学生の為にインターンシップのプログラムを作ったり、彼らがもっと日本人と仲良くなれるようにと友達作りの為のサークルやイベントを立ち上げたりしているが、長谷川氏のエール学園や大専各の専門学校の人たちの取り組みには、本当に驚いた。地域の人たちは、外国人との交流を積極的に求めているわけではない。しかしその中に混じって、留学生が、地域の役に立てる場を積極的に提供するこの大阪の専門学校の人たちの取り組みは、他のエリアでも大いに参考になるだろう。

ここでも、大阪人の持つ寛容性が発揮されているのではないだろうか。関西でよく言われるたとえに、『京都十代、東京三代、大阪一代』というものがある。京都や東京ではどんなにがんばっても一代目はよそ者というたとえで、東京なら三世代、京都なら十世代経たないと京都人とは認めないという意味だ。しかし、大阪では、実力さえ認められれば一代目でも『お前は大阪人だ』といわれる。大阪は他の地域に比べてよそ者を受け入れる寛容な文化があるということだ。

留学生の皆さん、どうせ日本で暮らすなら、一代目でも『大阪人』だといわれる大阪で生活して、地域に溶け込んだ生活を楽しみましょう。待ってまっせ~。
(グローバルコミュニティー編集長 宮崎計実)

 

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(アントレプレナーセンター代表取締役 福島正伸)著者:吉川宗男
編集:NPO法人国際メンターシップ協会