2024/11/18 20:54

実体験を伝えることの大切さ 元NHKキャスター 山本賀保子さんインタビュー

国際人

実体験を伝えることの大切さ
 
大阪大学外国語学部モンゴル語専攻の卒業生で、元NHKキャスター、現在はサイボウズ株式会社社長室所属の山本賀保子(やまもと・かほこ)さんにお話を聞きしました。
 
プロフィール:福岡県生まれ、大阪府育ち。2015年大阪大学外国語学部を卒業後、NHK高松放送局に入局。情報番組のキャスターを務めた後、2017年よりNHK大阪拠点放送局にてスポーツキャスターとしてニュース・情報番組で活動した。2021年4月よりサイボウズ株式会社に入社し、第2のキャリアを歩む。


学生時代はどんな風に過ごしましたか?
 
やりたいことをやって楽しく学生時代を過ごしていたと思います。大阪大学外国語学部でモンゴル語を専攻しましたが、モンゴル語はもちろん、フランス語も自分で勉強してニースに留学したり、フラメンコのサークル活動をしたりと、とにかく少しでも関心を持ったことには飛び込んでいっていました。
 
楽しい学生生活を送られたんですね。だけどマルチリンガルで勉強するって大変じゃなかったですか?特にモンゴル語なんて難しいと思うんですが?
 
そうですね。確かに複数言語を同時に学ぶと頭の中が混乱することもありますが、逆に外国語同士を比較しながら勉強する楽しみもありましたね。 
モンゴル語はキリル文字と 縦書きのモンゴル文字があり、最初は大変ですが、文法的には日本語と同じアルタイ語族で語順や単語が似ているところもあり、親しみやすい点もありました。
例えば、モンゴル語では先生のことをбагш(バクシ・bagsh)と呼びますが、それは、漢字の博士からきているそうです。あと、モンゴルは、相撲でも有名ですが、民族衣装も素敵で、私も民族衣装を着させてもらったことがありますよ。
 
一方、フランス語は、大学で勉強する環境が整っていたモンゴル語と違い、自分で勉強しないといけなかったので大変でしたが、 ニースに留学して実地でいろんなことが勉強できたので、それは、良かったと思います。 
 
どんな留学生活でしたか?
 
イタリアに近い、温暖なニースでホームステイをしましたが、世界中の人たちと交流ができて楽しかったです。 他のヨーロッパの国や、アメリカから来た学生が多かったですが、 私が留学した2012年頃は、 『アラブの春』の影響で中東やアフリカからの学生もたくさんいました。 私にとっては、彼らと話すことは新たな発見や気づきも多かったですね。
 
多くの方と素晴らしい出会いに恵まれましたが、チェチェン共和国の難民の方との出会いは特に印象に残っています。すごく親切で素敵な女性だったんですが、 紛争中、大変な思いをされた話を聞いて、 私自身、本で勉強することとは違って考えさせられる学びがたくさんありました。 実際の体験者から聞かないと理解できないことはたくさんありますね。留学の目的には、もちろん語学の習得というのもありますが、いろんな人とのふれあいから得られる経験もとても貴重で大切なことだと思います。 
 
 
なるほど。そんな想いもあって、アナウンサーを目指されたのでしょうか ?
 
そうですねえ、外国語だけではなくて、日本語にも興味もありましたし、物事の本質にもっと触れて、それを正しく伝えるような仕事がしたいと思い報道の世界を目指しました。
 
最初はNHK高松局で情報系の番組に就いたのですが、 そこでも、単にモノを紹介するのではなくてその背後にある人の思いも正確に伝えることが、報道と同様に重要なんだと実感しました。 
 
大阪局でのスポーツの取材でもたくさん素敵なアスリートの皆さんに取材をさせていただいたのですが、
去年の東京パラリンピック柔道日本代表の松本義和さんに取材をさせてもらったことがとりわけ強く心に残っています。松本さんは2000年のシドニー大会、2004年のアテネ大会に出場された経験のある方なのですが、なんと還暦直前で再び日本代表の座を勝ち取った方なんです。コロナ禍で十分な練習環境もなく、 ある時は、近所の公園で練習するなど、地道な努力を重ねて、東京大会に臨まれました。
実際に、松本さんたちが本番で活躍される様子をリアルタイムで見れたのはいい思い出ですね。



(スポーツキャスターとして競技場に足を運び取材も担当。時にはスポーツ中継のリポーターも担当した。)
 
その後、アナウンサーをやめて一般企業に行かれたのは、どういう理由ですか? 
 
2020年で30歳になり、 契約満了のタイミングでもあったので、働きやすい環境で、これまでの経験を生かした仕事をしたいと思いました。「いろんな社会課題の解決に向けて取り組んでいる会社はないかな」と探している中でサイボウズに出会いました。
 
事業の内容はもちろんですが、今後の人生を考える中で、働きやすい環境が整っていることも、私にとっては魅力的でした。
採用面接を受け、ご縁があり、子どもの虐待防止に向けた取り組みや災害支援の活動もも行っている社長室で広報のお仕事をさせていただけることになりました。本社は東京ですが、私は大阪オフィスに所属していて、主にリモート環境で仕事をしています。
 
なるほど、広報なら今までの経験を行かせますね。
あと、11月に大阪大学で開催される国際紅白歌合戦ですが、このイベントについては
どう思われますか? 

 
私自身も留学経験があるので、歌は語学を勉強する上でもとても役に立つと思いますし、歌がきっかけになって、他の文化に触れ、興味をもったりすることもあると思います。留学生にとっては、日本語を身近に感じる有効な手段だとも思いますし、見ている人達にも伝わるものがあるんじゃないかなと思います。私が学生なら見に行きますね。(歌は自信がないので観客として応援したいです。笑)
 
 最後になりますが留学生及び 日本人の学生さんにメッセージ をお願いします。
 
日本で学ぶ留学生の方々は一生懸命日本語を勉強されていると思いますが、折角いい環境にいるので、どんどん日本人と触れ合って生きた日本語を勉強して、またその背景にある文化なども触れてみてほしいと思います。
 
日本人の学生さんは、興味のあることにはどんどん挑戦してほしいですね。学生時代にしかできないことってたくさんありますから。 
 
今年の大阪大学で行われる第11回国際紅白歌合戦の司会をつとめて頂く山本賀保子さん。
モンゴル語専攻で、ニースに留学し、フラメンコも踊るが、日本語の表現もとても大事にしている素敵な日本女性でした。(グローバルコミュニティー 主宰 宮崎計実)