『地域活性化と多文化共生を目指すエール学園の取り組み』
エール学園長谷川総長インタビュー
『地域活性化と多文化共生を目指すエール学園の取り組み』
エール学園の長谷川恵一総長に11年ぶりにインタビューに伺った。
今では、1500名以上の学生を抱えるマンモス校だが、エール学園は、留学生が少ない時代から、彼らが地域に役立ち、地域に受け入れられる存在にしようと、留学生にボランテイアを推奨してきた。
言語や習慣の違いで、地域で留学生が受け入れられるには、何年もの試行錯誤があったが、長年に渡る地道な清掃活動が功を奏し、最近では、1000件を超えるボランテイアの依頼が、地域の方々から、エール学園の留学生宛に来る状況になってきた。
全国的に外国人の居住者が増え、地域住民とのトラブルに発展している地域もある一方、大阪市浪速区では、『なりたい自分、つくす自分』の理念の元、エール学園の留学生が地域に役立つ貴重な存在となっている。
地域活性化に貢献する留学生
『なりたい自分、つくす自分』とは、なりたい自分を目指し、自己実現すること、そしてその自覚が芽生えたものが、他者の自己実現をも助けるという発想。
エール学園では、忙しい業務の中、教員自ら、留学生と共にボランテイアや地域活動に積極的に関わり、そのことで、留学生たちに『生きた日本語』に触れる機会を提供している。
また、ボランテイアも地域活動も留学生にとっては、『生きた日本社会』を学ぶ貴重な機会でもある。最初はそれに気が付く学生も少なかったようだが、ボランテイアに熱心な学生ほど、成績が良く、希望の就職先に就くことも多いことが年々わかってきた。
『なりたい自分』⇒いい成績、希望の就職、日本の社会に溶け込む
『つくす自分』⇒ボランティアや地域活動で地域に役立つ
このように最初は迷惑がられていた、留学生たちが、地域に役立つ集団になってきている。
日本人の協力者が減少している『地元のお祭り』にも留学生が関わることによって、地域の活性化にも大きな役割を果たす。
大阪・ミナミには"大阪らしさ"が残るエリアとして外国人観光客に人気があるが、観光から一歩進んで留学、日本での就職、そして定住と一連の流れができれば人口減に歯止めをかけることができる。
また長年活動を続けてきた難波地区に加え、新今宮地区(
今後は、大阪商工会議所が推進する「グレーターミナミの活性化」プロジェクトとの連携も視野に入れ、外国人起業家の拠点づくりを目指すこの動きと連動することで、地域経済の活性化にも貢献したいと、長谷川総長は嬉しそうに語っておられた。
かつては生活スタイルの違いから浮いた存在だった留学生たちが、長年の地域の清掃活動を通して、信頼を勝ち取り、地域のお祭りにもお誘いの声がどんどん増え、地域の人たちにも彼らに対して理解を示す方々も出てきた。
今では、企業へのインターンなどで、留学生の語学力や異文化の感性を活かし、翻訳や通訳、マーケティングや営業補助などを行うほどになっている。
留学生たちは地域社会に貢献しながら、日本社会への理解を一層深めている。
多文化共生社会の実現が日本の未来にとって重要であることを理解する人たちもどんどん増えている。
留学生への積極的な機会提供を通じて『地域活性化』と『多文化共生』を同時に実現しようとする長年のエール学園の取り組みは、留学生にとっても、日本の地域社会にとっても、明るい未来をもたらすものに違いない。
(グローバルコミュニティー主宰 宮崎計実)