IOMバリガ代表インタビュー
東日本大震災では、地震だけでなく大津波と原発事故が「多文化共生社会」も直撃した。被災した在日外国人を国際機関として唯一、直接的に支援しているのが国際移住機関(IOM)だ。支援の先頭に立つ駐日事務所のウイリアム・バリガ駐日代表にその取り組みについて聞いた。(聞き手・イミグランツ編集長 石原進氏)
――帰国支援事業の進ちょく状況を聞かせてください。
バリガ代表
バリガ代表 4月末までに約60家族から帰国支援事業への申請がありました。まだ審査中のケースが多いのですが、これまでにパキスタン人4人、フィリピン人15人がIOMの支援によって母国に帰国しています。この事業は6か月間行う予定です。これからも多くの申請者が出てくると思います。
――どのような状況に置かれた人が帰国支援の申請をしているのですか。
バリガ代表 ケースによって違いますが、主な理由を挙げれば、地震や津波で家財道具を失ったり、仕事がなくなったり、子供が通う学校がなくなってしまい、これまでのような生活ができなくなった人たちです。そのうえ悲惨な体験がトラウマになったのに、母国語でのカウンセリングを受けられない、子供への心身面でも影響が心配という人たちが帰国を希望しています。実際、日本国内では外国人に対してできるサポートが限られている。彼らはのほとんどが帰国しても、元気になったら日本に再び戻ってきたい、と言っています。
――IOMは国際的に様々な人道支援を行っていますが、日本のような先進国への支援活動は珍しいですね。
バリガ代表 自然災害の際には通常、物資の支援を行っています。地震の被害に遭ったパキスタン、ハイチ、インドネシア、ミャンマーなどに物資の支援をしてきましたが、日本は自国政府が被災者に物資の支援はできます。帰国支援は性格は異なる支援ですが、日本政府も自国民の支援で大変ですから、手の届かない外国人支援を国際機関であるIOMが肩代わりしているわけです。それでも私たちの活動に対して、法務省入管局が職員を被災地に一緒に派遣して私たちと地元自治体の橋渡しをしてくれ、外務省は各国の大使館に対してIOMプロジェクトについてのブリーフィングをしてくれました。
――外国人の被災者にメッセージをお願いします。
バリガ代表 私たちの帰国支援事業は、決して帰国を促したり奨励するものではありません。被災地で困難な状況に直面し帰らざるを得ない人たちのうち、経済的な理由で帰国できない人に片道の航空チケットを支援するものです。あくまでも緊急人道支援です。本来はホスト国や本国政府の仕事かもしれませんが、それを代行するという意味では間接的な支援かもしれません。本当に困っている人がいれば、これからも帰国のお手伝いをしたいと考えています。