2024/11/22 01:46

いい体験が人や組織を変えていく

特集
キーワードは『母性』。お互いが『与え合う感覚』を何より大切に。
普通の主婦から映画プロデユーサーへ転進。初めて作った映画が日経地域情報化大賞・「日経MJ賞」を受賞。映画製作を通して人の心に火を付け、地域を再生していく越後啓子さんにお話を伺いました。
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映画のプロデューサーになるまでの経緯を教えてください

主人の仕事の関係で東京から福島県白河市に移住したとき、慣れない土地で子供がまだ小さかった専業主婦の私は、まず、子供の学校のPTA活動に参加し、町内でのコミュニケーションに努めました。次第に多くの友人知人ができ、東京での人脈を活かし、講演会やイベントを主催するようになりました。しかし、私も含めて周りは今までイベントなど主催したことのない主婦達ばかり。様々なトラブルもありましたが、素人のみんなが気持ちをひとつにして地域の人たちの応援を得ながら、何とかイベントを成功させることができました。今までそのような活動に縁のない主婦の方々が涙を流して喜ぶ姿を見て、人が持っている現場力や普段は気がつかない人の魅力を実感することが出来ました。本当にいい経験でしたね。その後、熱心な若い製作スタッフ達との出会いがあり、地域の活性化にも繋がると思い、白河市でのロケ支援を提案。制作スタッフ達の熱意も伝わり、前代未聞の地域住民とプロのスタッフとで創る、映画製作のプロジェクトがスタートしました。それを契機に映画会社を設立し、プロデューサーとして本格的に映画に関わるようになりました。

映画作りで学んだことは何でしょうか

映画を通して、製作に関わる人達全員が、自然にテーマを共有し、映像に撮られることで町が変化していく姿に感銘を受けました。今までは、どうしても変わらなかったことが映画の撮影を通じて変わっていったのです。大事なことは、技術、手法、お金だけでなく、製作に関わる人たち、一人一人のモチベーションをどれだけ上げられるかということだと実感しました。

越後さんにとって教育とは何でしょう

教育とは「いい経験」を積み重ねることだと思います。たとえば、町おこしの映画の製作でも最初は大変ですが、製作に関わる人たちが映画を作るという目的に結集すれば、町の組織自体さえ変わっていくこともあります。限られた時間の中での撮影でも変更や新しい提案が次々出てくるので、組織のルールでいちいち許可を取ったりしていては時間が間に合いません。そこで、トップの方と相談して、トップダウンで直接指示を出してもらう体勢を作りました。ある自治体では、映画の撮影がキッカケになり、その後もトップ直結のプロジェクトが増えたようです。「いい経験」をすれば人は自然と学びます。既成概念にとらわれず、とにかくやってみることですね。

教育に関して、私の心のあり方の原点は母性ですが、女性の持つ子供を生み育てていく感覚が、映画作りや組織の活性化にも大切だと思います。子育ても映画のプロデュースも予定通り行かないのが当たり前ですが、自分を犠牲にしてでも、家族のために、あるいは映画のために臨機応変に対応していく柔軟性が母性にはあると思います。男性的な社会はある意味、奪い合う社会かもしれません。しかし、母性の強い女性的な社会は与え合う社会といえるでしょう。日本のいろいろな意思決定の場所で大切なものを守るために、今後女性の与え合う感覚が必要とされてくると思います。



今後、日本に多くの留学生が増えていくことが予想されますが日本はどのように変わっていくと考えていますか

これからますます民族の移動が活発になり、特にアジアの人々との関わりが大切になってくと思います。その中で留学生達の独自の役割を作ってあげないといけないと思います。例えば、通訳でも単なる機械的なものではなく文化を超えたコミュニケーションという重要な役割を担っているのです。そのように別の視点からみて役割を与えること、工夫することが大切だと思います。

今後はどのような活動を行っていく予定ですか

今は、人それぞれが持っているキャリアに注目して活動しています。社会で長く働いた人は勿論、若い人でもそれまで生きてきたキャリアがあります。経験や年齢、性別のみで人を判断せず、ひとりひとりが持っている感性を大切に育てていける組織を作っていきたいですね。
そこでもキーワードは『母性』です。お互いが『与え合う感覚』を何より大切にしていきたいです。

地域活性・教育改革の仕掛け人

越後啓子氏 プロフィールこれまでの概念を覆す映画制作法を次々と展開。期間限定型のパートナーシップマネジメントで、地域を巻き込む手法は、ビジネス・地域活性の分野でも注目され全国からの講演依頼も多い。映像の魅力を通じて、子供達の教育環境改善を図りたいという強い願いを持つ。 洞爺湖サミット公式記念上映作品/環境映画「KIZUKI」・文部科学省2008年第20回生涯学習フェスティバル・「まなびピアふくしま」記念事業作品/映画「春色のスープ」などのプロデュースに参加。 多くの地域の特性を生かした教育改革のプログラムで活躍。今もっとも注目されている地域活性・教育改革の仕掛け人のひとりである。
インタビューした学生の感想

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三浦宏起さん 慶応大学4年 

インタビューの際、越後さんは今まで多くの自治体や地域の悩みが、映画作りを通して、解決していったとおっしゃっていました。映画作りには、人や地域を変えていく「きっかけ」になる様々な要素があるようです。「良い経験」は、悩んでいたこと、改めて実感すること、今まで意識しなかったことなどを気づかせてくれます。そして、気づきこそが新たな創意工夫を生む第一歩であると思うのです。私もこの取材活動を通じ新たな気づきを得て、皆様に提供していけるよう頑張りたいと思いました。

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