生活文化の背後にあるもの
生活文化の背後にあるもの
多文化家庭支援センターから no.16
多くの国際結婚のカウンセリングをしている中で良き聞く言葉が「どうして日本にはよくわからない色々な決まりごとがあるのかと、夫や姑に聞いても、なかなか納得のいく答えが返ってこないということです。
それが文化の違いと言ってしまえばそれまでなのですが,多くの外国の人にとっては『これが日本人の考え方だから』だけでは中々理解出来ません。
この夏、恒例のファミリーキャンプがあり、90人ほどの国際結婚家庭が集まりました。その中で,大人の懇談会を持った時におもしろい発言がありました。
「うちの奥さんはモンゴル人で乾燥した国から来ているから、高温多湿の日本の環境が良く分かっていないんですよ。何度言っても残飯を台所の流し台におきっぱなしにしていると、うちの母親が愚痴をこぼしていました。モンゴルと違って,特に今年の夏なんか、一日ですぐにカビが生えますからね。」
これを聞いたとき長年答えられなかった悩み相談の回答が、一気に与えられたような気持ちになりました。
日本の夏は湿気が多くて、フィリピンやアフリカの人でさえ過酷だというほどです。ですから雑菌の繁殖速度も速く、すぐに匂いやカビが発生するので、出来るだけこまめに掃除をしたり、清潔に保つ習性が日本人の中に染み付くようになったのでしょう。
かつて世界中を震撼させ、あれだけ菌の繁殖速度が速いと言われたサーズ菌もついに日本にだけは上陸できなかったという事で、世界のメデイアが日本の生活衛生の取材に来た事がありました。デパートのエレベーターガールやタクシーの運転手さんが、清潔を保つために手袋をはめていたり、冬には風邪予防のマスクをした人たちが町中にあふれ、また学校における手洗い励行も目を見張るものがあると驚きのレポートをしていました。日本では何でもない事でもその徹底ぶりは外国人からしてみると異常だと言うのです。
また、人であふれかえる大都市近郊の駅のプラットホームに秩序正しく列を作る様子にも目を見張るものがあります。最近は変わったと言われながらも、日本人のこの集団行動、行儀の良さは見事です。多くの国ではハンバーグ屋さんの前できちんと列を作って並ぶなどあり得ません。まだまだ、集団秩序に社会が重きを置かない国もたくさんある中で、日本のこの秩序整然とした文化は世界の中でも異質に映るのでしょう。
今回の3.11の大震災で、日本社会の秩序がどれほど世界の注目を浴びたかは記憶に新しいと思います。今回の大震災を通して、私達は日本という国が過去において地震や津波に襲われても,それに備える訓練や心構えを後孫に残すべく言い伝えて来たかを気がつかされました。運動会や卒業式の整列行動も学校訓練のような形になって受け継がれているのもそうでしょう。元々は災害時の避難対策の教えの一環だったのではないかと思います。
意味もない慣習や決まり事だと思っていた事が、実は自然環境や気候、地震災害などの歴史的体験から生まれていて,現代人にもその意味がはっきりとは認識されていないものがたくさんあるでしょう。
よその国から来た人たちに日本人はどうしてこんな事をするのか?
と聞かれたときに、その歴史性や先人達の知恵について語れるような日本人でありたいと思います。。
多文化家庭支援センター 事務局長 エインズワース千明
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