2024/11/21 21:57

多文化出産 韓国人女性の場合

みんなの生活
-知らないことと不得意の違い- 韓国人女性の場合

今回のお話は、わたしたちが知らず知らずのうちに
持ってしまっている勘違いが危険な状態を招きかけたケースです。
 
藤原ゆかりさん 助産師、看護師。
多文化医療サービス研究会(RASC)の共同代表
http://www.rasc.jp/
 
 
外国人の患者さんと出会ったときに一番困るのがコミュニケーションですね。言葉の違いはいろいろなトラブルを引き起こす場合が多いですし、面倒なことも増えますね。そんなとき、その患者さんはただ日本語が不得意なだけで、知識を持っていないということではないことを区別できますか?

たぶん、そこまで考えずに対応している場合が多いのではないでしょうか?説明している内容がうまく伝わらない場合、説明の方法や言葉を変えながら何とか理解してもらおうと努力しますね。しかし、それでも相手の理解がうまく得られないと、無意識に「この人はこの病気や治療を知らないのかもしれない」とか「医療の話を理解できないかもしれない」という判断をしてしまうこともあるかもしれません。

実際にあったケースです。韓国人の妊婦Aさんは、妊娠中期(7ヶ月ごろ)ごろに体調の異変に気づいて病院に連絡しました。しかし、日常生活で日本語では支障のないAさんでも、自分の妊娠の状態についてはうまく日本語で説明できませんでした。彼女のつたない日本語は、幼稚に捉えられたのでしょうか?医療者は、彼女の説明について全く取り合ってくれなかったそうです。夜間でもあり彼女も心配になって、電話では「大丈夫。」と言われたものの、自分で判断し受診したそうです。その結果、かなり危険な状態という診断でそのまま緊急入院となり、その後1ヶ月間病院で過ごすことになりました。

母語ではないことばをうまく話せない不得意な状況と、何かの事柄に対して知識が少なくわからないということは、違います。確かに言語の障壁があると、話している相手の理解度を知ることは困難です。しかし、はじめから「たぶん何もわからないのだろう・・・・」と思いながら話をするのと、「きっとこのことについては知っているのだろうけど、ことばの違いが邪魔をしているのだな・・・」と思いながら話をするのでは、態度と判断に大きな違いがでてくるしょう。

言葉がつたないことは、そのことを知らないからわからないということばかりではなく、その言語を使用することが不得意という場合があり、それは知らない、わからない、ということとは違います。そのことを頭の片隅においておくと、言語の違いがあっても、お互いの気持ちや伝えたいことがより伝わるかもしれませんね。