2024/12/20 01:00

スタント・メソッドを学んで no15 『感動を受ける自分』から『人を感動させる自分へ』

イベント

 

 早稲田大学総合研究機構年間報告会 11月9日(金) でお話をさせていただきました。以下、長文ですが、約3年間スタント教授のモチベーション教育をまじかで見て感じたことをまとめています。ぜひ、お読みいただけるとありがたいです。

 

『感動を受ける自分』から『人を感動させる自分へ』

 

スタントメソッドに影響を受けた多くの人たちに取材して感じたこと 

留学生と国際派日本人の国際交流新聞 
グローバルコミュニティー 編集長   宮崎計実

 

 

シンポジウム後の懇親会にて

 

 


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スタント教授とお会いした当時にお話を聞いた多くの学生さんたちは、何かしらの悩みを抱えていて、学生生活に物足りなさを感じていた。一見何不自由ない、エリート大学の学生たちがなぜなのか?

それまで、私は仕事柄、留学生との関わりが多かったので、 目的意識を持っている彼らと比較して、 日本人の学生のやる気の出ないのは、一種の贅沢病だと思っていた。
恵まれた環境が当たり前の状況で育った 日本人の学生にとってはスタント教授の生い立ちなどを聞いても想像も出来ないだろう。それが、スタント教授のクラスで学んでいる学生に対する第一印象であった。

私は取材のため、定期的にスタント教授のクラスにオブザーバー参加していたが、授業が進んでいくと明らかにクラスの雰囲気が変わって行くのを感じた。クラスの前半はスタント教授の講義、後半は、各人の発表だが、これが普通の発表とはわけが違う。


スタント教授の壮絶な生き方を聞いたあとで、学生たちも、自分の経験から出て来た本当の話ほど、聞いている人間の心を揺さぶるものはないことを悟る。

スタント教授は、幼少時よりの数々の困難を乗り越え、26歳で念願だった日本での大学生活をスタート。インドネシアの私費留学生として多くの困難の末4つの博士号を取得。それでも、日本社会では受け入れられず、不退転の決意で渡米。そこで、やっと大学教員の職を得た不屈の人物だ。『学ぶ』ことにこれほど真剣に向かい合った人の話を聞けば、学生達も少しづつ閉ざしていた心を開き、『学ぶ』ことの大切さを意識するようになる。そして何より辛い経験やコンプレックスなども隠さず話すと人に共感を与え、心と心のコミュニケーションが出来ることを学ぶ。

 

自分が今まで誰にも明かせなかった、劣等感や絶望感も人に打ち明けようとする学生が現れる。そして、その気持ちと戦っている仲間のスピーチに拍手を送ったり、励ましの言葉をかけるものも出てくる。

これこそが、『感動を受ける自分』から『人を感動させる自分へ』の変化の第一歩だ。

 

どんな人間にも挫折感や困難から立ち直った経験、友人や親兄弟のありがたさなどを感じた経験が大なり小なりあると思う。そこには、人と人の真剣なやり取りがある。

しかし、学内でそんな大切なことを真剣に話し合う機会はほとんどなく、お互いに傷つかないように、うわべだけの付き合いが今の大学では横行しているように思う。

 

スタント教授のクラスには、他のクラスで体験できない、『心と心のふれあい』を求めてやってくる学生達も多い。将来のことや他人と比較してどうしても自分自身に自信が持てない自分に対する嫌悪感など、人に自分を明かさないことの弊害が、多くの大学生の精神を蝕んでいる。 1,2 回目のクラスでは、 クラスの他のみんなと馴染めない者でも、周りの者がひとり、 2 人と変わって行く様子を見ているうちに、自分も本当の自分をさらけ出して、みんなに認めてもらいたいと思うようになる。スタント教授の様に、自分に与えられた試練をバネに今以上に飛躍しようと、前向きに取り組む姿勢がその結果より大切だと気づく。

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それでは、実際にどんな学生がいたのか、印象に残った具体例をいくつか紹介してみよう。

 

Oさんは、宮崎の地元の高校を優秀な成績で卒業し、得意の英語を生かし海外に飛び出して活躍したいと早稲田大学国際教養学部を選んだ。しかし、周りは英 語がネイテイブの帰国子女や英語の授業になれている留学生たちが多く、得意なはずの英語にも自信をなくし人生の目標を失いつつあった。その失意の彼女を 救ったのは、スタント教授の英語での電子回路の講義だった。そこで、学ぶことの本来の楽しさに出会う。スタント教授の学生に対する情熱や自身の苦労の末に 教職についた話などに心が打たれた。失っていたやる気を取り戻すことが出来た。今はイギリスでの留学生活を終えて、モーチベーションのクラスを取っている 彼女は言う。 『先生の情熱は冷めていた私の心を動かしました。先生自身がうつ病になるくらい大変苦労されたからこそ、心の痛みを抱えている人をほってお けないんだと思います。一人の学生も見捨てない、限りない情熱と大学の教育を変えるぐらいの強い意志をもった人だと思います。』

17 年間をアメリカで過ごした帰国子女の Tさんは、授業中はまじめに話を聞いているがどんな感動的な話をきいても、他人事に聞こえてしまい、どうしても モーチベーションが上がらなかった。そして最後の授業が終わった後、スタント教授に呼ばれしぶしぶ話を聞いた。そこで、 2 時間以上色々なことを話したが、 一生懸命にノートを取りながら、学生の話を聞き、理解しようというスタント教授の熱い気持ちに少しずつ心を開いていった。人見知りの彼女には、『高木さん はリーダーシップがあるよ』という言葉がとてもうれしかった。スタント教授の『あきらめない』気持ちがここでも奇跡を起こした。今ではクラスの交流会を企 画するなど、早速リーダーシップを発揮している。

 

小中高の約 12 年間をタイ、シンガポールで過ごしたKさん。日本の大学のなんとなく楽をして過ごす雰囲気にあまりなじめなかった。彼女は自分の興味のあることを中心に単位を取るうち、シラバスにあったスタント教授の熱いメッセージに出会った。 『アメリカ留学中に、英語の授業を理解して単位を取ることが、いかに大変なことか肌で感じていたので、日本に帰ってからも自分を厳しい環境におこうと思った。スタント教授の授業はとても厳しいが、しかしその厳しさは、学生への愛情だと思うことが出来るようになった。』

 

『幼いころ、シンガポールに家族で赴任した際、父は勤めていた会社の清算業務を一手に引き受けて日々奮闘していた。家族にあたったりすることもあり、幼 かった私はそんな父を好きになれなかった。どうしてこんな家族に生まれたのだろうと思うこともあった。しかし、スタント先生の 困難には積極的に立ち向か い困難と友達になりなさいという言葉で目が覚めた様な気がした。あの時父は、私達家族のために一生懸命に戦ってくれていたのだ。今は、素直に父に感謝で きる自分がいる。
スタント先生の言葉は心に深く残ることが多い。それは先生自身が、戦い続けた心の葛藤を包み隠さず私達に話しているからだと思う。これから大学院に進ん で、特にアフリカの子供達の教育に関わりたいと思っている。いろいろな経験をさせてくれた両親に感謝しつつ、途上国の子供達のために頑張って行きたい。』

 

Nさんは、高校時代にカナダに留学。得意の英語も生かせて、他に無い魅力を感じて、早稲田大学国際教養学部に入学。しかし、途中から入部したクラ ブ活動の雰囲気になじめず、自分の存在意義を否定されたように感じ、また、簡単に単位が取れる、出席が問われないなどの理由で講義や講師を選択する『普通 の大学生』の学ぶ姿勢にも疑問を感じていた。

 

自分がこれから何をどう考えて生きていくのか?

 

カナダにいるときは、アットホームな雰囲気で個人が尊重された中で生活が出来ていた。しかし、日本に帰って来てからは、周囲を過剰に意識しす ぎ、自分自身が分からなくなった。スタント教授の授業を取ったきっかけは、『 Motivation  & Education 』のクラスでその答えを見つけようと思ったからだ。
スタント教授は生徒個人への関心がとても強い人だと感じた。教授と学生のいう感じではなく、人生の一先輩として、生徒に接する姿はとても印象的だった。知識を学ぶことも大切だが、根本的な『人間としてのあり方』『勉学に対する姿勢』など、本来学生がもっと真剣に考えなければならない大切なことを考えさせられた。
卒業し、社会に出て、製薬会社などの営業職に就いたが、素の自分を見せることの難しさ、自分自身を磨いていくことの大切さを知った。スタント先生 のことばで、一番印象に残ったことは、『 GIVE GIVE GIVE の精神の大切さ』だ。どんなに相手が自分を認めてくれなくとも恨むことなく誠を尽くすこと。その気持ちを忘れないように、また私の学んだことを少しでも、体験談を通して学生さんにお話をしたいと思い、 TA(Teachers   Assistant) をさせていただいていた。

 


 

大学生活は、目的を持たなければ、どんどん空しく時間が過ぎていく。今、『 Motivation  & Education 』のクラスにいる学生さん は、学生時代の私のように『人間として大切なもの』を見つけようと参加している人が多いと思 う。私も彼らの真剣な姿勢に心を正されることも多い。 やる気のない学生が多いと世間ではいわれるが、教育者も学生の期待に応えるような情熱が必要なのではないか TA を通して意欲に満ちた学生さんが社会に 出て行けるようなお手伝いをしていきたい。

 

最後に私自身の経験も少しお話をさせていただきたい。私が企画・運営をしている不動産業界団体の留学生インターンシップのブログラムでもスタントメソッドを取り入れている。そのインターンシップは 3 年前から始まったが、前研修に受け入れ企業の担当者も参加してもらうことにしている。通常のインターンシップの研修やオリエンテーションでは参加するのは学生のみがほとんどだろう。しかし、スタントメソッドの『 TRUE   STORY は、人の心を開き、お互いのコミュニケーションを促進する』という考えから、留学生の受け入れに不安のある日本人担当者も研修に参加してもらっている。研修の中では、企業担当者と留学生がペアになってお互いのことをもっと知る為に決められた質問をし合う時間をもうけている。留学生からは、日本の中小企業のいいところ、個々の会社の特徴や社内の雰囲気、求める人材像、経営者の理念などについて質問をする。企業からは、どうして日本に留学に来たのか?日本の印象は?日本に来て一番嬉しかった事や辛かった事、インターンシップに対する期待や不安などを聞く。留学生の素直な日本語表現は、普段留学生と関わりのない多くの企業担当者の心を打ち、自分達も受け入れには不安なところもあるが、みんなの熱意に応えるように精一杯サポートしたいと心から答えるようになる。

 

 

 留学生インターンシップの準備段階で一番大切なことは、留学生と企業担当者の密なコミュニケーションだと思う。お互いこれから 1 ヶ月の間、共に行動することになるので、出来るだけ相手を知ろうとし、時間が経つごとに熱気を帯びていい雰囲気になって来る。そして研修の最後に、お互いの印象とインターンシップに臨む決意表明をペアごと、みんなの前で発表してもらう。留学生の日本でがんばろうという気持ちと何とかその気持ちに答えてあげたいという担当者の気持ちが重なって毎回大いに盛り上がる場面だ。

 

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上記の4人の学生さんと私の具体例を上げたが、 スタントメソッドを学ぶうちに、自分のモチベーションを上げるためには、自分の心の持ち方、周りへの感謝の気持ち、仲間を思いやる気持ちが大切なことを知る。またそのモチベーションを高く保つには、自分自身が『感動を与える』存在になることが重要であると悟る。これは、学生達が社会人として巣立って行く前に学ばないといけない本当に大切ことで、人間教育として学部を問わず、全ての学生に教えられるべきことではないか?

 

スタントメソッドは、うわべだけをまねしても効果はない。このメソッドの真髄は、教える側の学生を『あきらめない』決心にある。実の子供のようにその学生のことを真剣に考える。そして真剣にぶつかっていく。その姿勢が教育者には必要だ。大学の教授も例外ではないと思う。特に文系の教員の方々には必要だと思う。理系の教授は専門の研究や専門分野の研究者を育てることを通して実社会に貢献することが出来るが、文系の教授はそれはまれであろう。それなら、専門の学問を通して人の心を育てることこそが、社会への貢献ではないであろうか。もし、それは大学教員の仕事ではないと放棄する風潮があるのであれば、子供を将来送り出す保護者の立場として言わせてもらえれば、それは職務放棄だと思う。厳しい経済状況の中、高い授業料を保護者は工面しているのだ。4年間、大学に通っても、人間的に社会で通用しないような者を輩出するのであれば、大学の存在意義が問われると思う。

 

今からでも遅くはないと思う。大学の教員の方々こそ、スタントメソッドと真剣に取り組み、失敗してもあきらめずチャレンジする美しさを伝え、一生懸命に生きる素晴らしさを誇れることが大切だと学生達に語ってほしい。

 

大学教員の方々は、多くの試練や地味な研究を重ねながらその立場を勝ち得ってこられた本当に立派な方々だと思う。その経験をあきらめないで学生達に語って頂きたい。先生達が真剣に話しているのに、話を聞く姿勢がなかったり、態度が悪かったりすれば、それこそ激昂すればいいと思う。とにかく、真剣になっているところを学生に見せて頂きたい。私自身も学生を面談し、就職相談を受けるのが仕事だが、大学3年になっても常識はずれの学生があまりに多いので、その場合は男女かまわず、真剣に叱っている。生意気な学生は鼻をへし折る。ぼろぼろと涙を流す学生もいるが、不思議と素直になって、色々と話し出す学生が多い。自画自賛で申し訳ないが、これもスタントメソッドで学んだ、学生に『あきらめない』姿勢を愛情を持って示すことが出来ているからだと思う。

 

スタントメソッドの特徴は、クラスの雰囲気が段々とよくなって学生同士が励ましあうようになることだ。誰かが自分の心をさらけ出し、発表をするとそれにエールを送る。やがて、心より仲間を大切に思う心が芽生え、クラスの中に連帯感が生まれるようになる。そこまでいくと、スタント教授は、脇役である。休み時間になっても議論したりするようになり、日々感じていることもみんなで分かち合うようになる。

スタント教授のクラスは、学生のマインドセットを変えることによって、学生同士の心の通ったコミュニケーションを引き出すことにも成功している。


この現象が大学生、特にエリート学生の間で起こっていることは奇跡的だ。

以前に、 7 年前にスタント教諭の授業で学んだことを、今でも自分の生きる指針としている卒業生Rさんに出会った。
彼女は、 5 年ほど前、塾の講師を経験した時に、スタントメソッドを
使って多くの学生を指導したが、その時の学生たちとは今でも、やり取りがあるという。

自分の人生が変わる程、人から大きな影響を受けると、自ずと自分も他人に影響を与える自分になりたいという気持ちになる。Rさんはその典型例だ。

引きこもりから名門大学に留学した学生
25 年のうつ病から立ち直り、日本企業の管理職に なった 40 代中国人女性
スタント教授の授業の中で父の愛情を知った日本人学生
などなど、数えれば切りが無いほど、色々な体験談を聞いた。

「大学全入時代」に『生きていく力』を教える大学の存在意義が問われる時代になってきたが、知識の取得も大切だが、その知識を社会の中でどう生かしていくのかを教えて行く必要があるのではないか。


今一度、心の教育、社会のリーダーになって行くために必要な能力、
やる気に満ちた雰囲気を作っていく能力が問われているように思う。

 

 

 また、国際教養学部の多文化の環境で生まれたスタントメソッドはその生い立ちから、国際性を帯びている。
この時代に、スタント教授のモチベーション教育にスポットライトが当たり始めているのは、時代の必然であろう。これを期に多くの教育に携わる方々が、初心に帰り、受け持った学生を『あきらめない』姿勢で導き、またその学生が起爆剤になって周りにいい影響を与え、大学の雰囲気を変えていく行く様になれば、日本の社会も自ずと素晴らしい方向に向かっていくであろう。

 

 

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