『多文化家族支援法』について考える no.2
前回、韓国の「多文化家族支援法」について簡単に紹介しました。
そもそも国際結婚をしている立場から言うと、日本という国は基本的に外国人を結婚相手として認めるような体制にはなっていないのだなあと、思い知らされる事がたくさんあります。一般の人からすればそんな事は疑問に感じない事かもしれません。
けれども、私の場合アメリカ人と結婚し、アメリカで日本から戸籍を取り寄せて日本領事館で結婚手続きをし、そこで結婚生活を始めていましたので、国際結婚最初の出発はアメリカという国での生活でした。その後、出産を機に日本へ帰って来たわけですが、そうしてみると、2つの国の国際結婚に対する違いというものを大きく感じざるを得ませんでした。
まず、『戸籍』というシステムです。私達日本人にとっては、生まれた時からついてくるものですから、その事に普段は何の疑問も持っていません。ところがアメリカには『戸籍』がないのです。これはとても不思議な感覚でした。結婚したら、『結婚証明証』が発行され、出産すると『出生証明書』が発行されます。
後は、アメリカ合衆国国民として、あるいは滞在者として『ソーシャルセキュリティーナンバー』(以下S.Sと省略)を取得するだけです。その後は、至る所で、このS.Sが、ほとんど全ての事務手続きを引き受けてくれるのです。住所の確認は日本と同じように免許証か住民登録証を用いますが、学校の入学手続き、企業への就職、様々な法の手続きはすべてS.Sです。
さて、日本人にとっては空気のように当たり前の『戸籍』ですが、アメリカ人である私の夫にしてみると、考えられない外国人差別の根幹であるというのです。なぜなら、『戸籍法』によると、ミドルネームは認められていないのです。ミドルネームは認められていないので、自分の子供にミドルネームを与えようと思えば、そのミドルネームは名前(いわゆるファーストネーム)の一部として届け出なければなりません。つまり、ファーストネーム、ミドルネーム、ラストネームを持って育って来た人間がその子供に同じように名前を付けようとするときにその文化を否定される。つまり外国人差別がそこから始まるというのです。
ここにこだわる私達は、今までに何度も家庭裁判所に行ったり、法務局や市役所との議論をたくさん戦わせてきました。未だ解決していなくて、最終的には裁判まで持っていかざるを得なくなっています。
実は、この『戸籍法』こそが、私が『多文化家族支援法』に関心を持つようになったきっかけかもしれません。それは“外国人が日本で、家族を持って生活をして行くために守ってくれる法律が必要だ”と感じて来たからです。
そしてまた、この『戸籍法』を知る事が、“世界中に多くある国は大きく2つにタイプ分けする事ができる。それは『移民国家』か『純血国家』かで、法律の成り立ちが違っている”という新しい知識を得るきっかけにもなったのです。
「アメリカ合衆国」や「カナダ」「オーストラリア」などは代表的な『移民国家』です。そもそもこれらの国々は移住者、移民者達が、作った国なので、言葉や文化が違う人たちが一緒の国に住むためにはどうしたら良いかが、国づくりや法律づくりの基本になっています。ですから、これらの国々は『多文化共生国家』なわけです。そのためにこれらの国々では当然のように外国人(新移住者)もこの国の国民となりうる事を初めから想定して社会のシステムがなりたっているのです。
そうすると、当然『移民国家』ではない、いわゆる『純血国家』すなわち国民は同じ言語を使い、同じ文化を有する事を前提として様々な社会の成合(なりあい)が決まっている国とは、法律から社会のシステムから、全く性格の異なる国となってくるわけです。これは勿論どちらの国が良くて、どちらの国が悪いとか、優劣を付けるような問題ではありません。ただ、国の性格が違うということなのです。
ですから、いわゆる『純血国家』の代表でもあるような韓国が『多文化家族支援法』という『移民国家』の仕組みを取り入れていこうとするような取り組みを始めた事は世界的に大変な変革の始まりではないかと、私は大げさに感じてしまいました。
今私が提唱しようとしている、日本で『多文化家族支援法』を議論すると言う事は、すなわちこれからの日本と言う国の成合(なりあい)の方向性の大転換について議論をしていくということです。
多文化家庭支援センター 事務局長 エインズワース千明
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