国際紅白歌合戦を国際的行事に育てよう
国際紅白歌合戦を国際的行事に育てよう
『we are the world』を参加者と共に熱唱する溝畑観光庁長官
約20カ国からの参加者・観客が歌合戦を見守った
(文:国際紅白歌合戦実行委員会 多文化情報誌イミグランツ編集長 石原 進氏)
「紅白歌合戦」といえば、言うまでもなく大晦日にNHKが催す国民的な行事である。ヒット曲や懐かしのメロディーを国民がみんなで共有し、人々はその年にあった様々な出来事を振り返る。そして、新たな年に向けて国民的なつながりや連帯を確認するのだ。そのメロディーは、時代や世相を映し出す鏡でもある。
「国際紅白歌合戦」は、「紅白」にかこつけたものの、趣はちょっと違う。歌合戦の“主役”は、「紅白」よりも、まさに「国際」である。それは私たちの身近にいる外国人たちが折りなす「多文化歌合戦」ということもできよう。
被災地の人たちのためにAMAZING GRACEを捧げる太宰さんと世界の仲間たち
困っている時は助け合っていこう
左:『Melodies of life 』を歌ったセバスチャンさん 右:『You're beautiful 』を歌った辻林さん(高校2年)
『キセキ』を歌う、中国人(姜さん)と韓国人の友人のデュオ
歌合戦とは言っても、東日本大震災を抜きには語れない。3・11の未曾有の大地震と大津波、さらには原発事故。世界各国から援助隊が駆けつけ、「頑張れ、ニッポン」のコールとともに募金も相次いだ。在日外国人も被災地にボランティアとして駆けつけた。在日外国人にとっても「ヒトゴト」ではなかった。「被災地の人たちを元気づけたい」。これを国際紅白歌合戦の企画段階からテーマとして考えた。
会場を沸かした溝畑観光庁長官
歌合戦に参加した「歌手」たちもの思いは同じだった。それが海外に向けて発信されれば、「被災地へのエール」となってこだましてくるはず。そのうねりをより大きくするため観光庁に後援をお願したが、溝畑宏長官自らが白組の歌手として登場し、型破りの熱いパフォーマンスを演じて会場をわかせた。
9ヶ国語のエスニックメディアでも掲載された
エスニックメディアや多文化メディアが主催団体に名を連ねたことも挑戦的な取り組みだった。媒体力ではマスメディアに大きく劣るが、それぞれが母国語でITを駆使して発信する情報は楽々と国境を越える。日本語マスコミとは別の次元で威力を発揮する。ユーストリームによる実況中継の試みもあった。国際紅白歌合戦の「国際」の意味はそこにもある。
それにも増して注目すべきことは、様々な国籍の外国人や日本人が歌を通じて一つになったことだ。在日外国人は200万人を超えるが、国籍が違えば交流する機会はほとんどない。ともすれば同じ国籍同士が集まりがちだ。同じ言葉をしゃべれなければ、当然といえば当然である。
しかし、歌声は言語の壁を越える。それを国際紅白歌合戦が示して見せた。圧倒的な歌唱力で賞を受賞したフィリピン人介護福祉士候補生のデンマークさんや日本とコンゴのミックスルーツの太宰鶴恵さん。彼らの歌声は「共生」への力強いメッセージとして心に響いた。
国際紅白歌合戦で出会った新しい仲間と記念写真
HNKの紅白歌合戦が日本の国民的行事であるなら、国際紅白歌合戦は多文化社会の共生行事ということができる。いや、地域のイベントにとどまっていては面白くない。回を重ねて、世界の人たちの注目を集める国際的行事に育ってほしい。
多文化情報誌『イミグランツ』
グローバルコミュニティーでは、今回、多文化共生に詳しい元毎日新聞論説副委員長の石原進氏に国際紅白歌合戦の総括の記事を書いていただきました。石原氏は、記者当時から日本における外国人問題に深い関心をもち、「多文化共生社会・日本」 の実現をはかるべく多文化情報誌『イミグランツ』を創刊されています。第一線のジャーナリストとして活躍された深い見識と、毎日新聞政治部副部長時代に培った豊富な人脈を活用し、海外有識者ネットワーク日本事務局長を努めながら、『日本社会の内なる国際化』の啓蒙活動を『イミグランツ』を通して地道に続けておられます。
『イミグランツ』は、以下の公式サイトよりお求めいただけます。
http://www.imin.co.jp/immigrants/
多文化情報誌『イミグランツ』 NO.4
特集1:東日本大震災と在日外国人・・被災地でボランテイア活動に参加した外国人の人たち
特集2:『EPA』を問い直す・・待ったなしの人材不足。いろいろな角度からEPAのシステムを考える。
特集3:『開国』から20年・・単なる労働者としてではなく、日本を作っていく仲間として。。