日本人にとって『働く』とは? 東條英利氏連載コラム NO.12
日本人にとって『働く』とは? 東條英利氏連載コラム NO.12
皆さんは、「働く」ということに対して、どういう想いを持たれているでしょうか。近年は、世界経済の失速が懸念され、日本でも恒常的不況が叫ばれております。一部には、このまま日本は後退して世界における存在感を弱めていくのではないか、そんな声が聞こえる始末です。果たして、本当にその通りになるでしょうか。実は、私はそう思ってはおりません。何故なら、私は、日本の強さの意味というものを知っているからです。
そもそも日本は、どうして、こんな資源もないまま、世界有数の経済大国になることができたのでしょうか。よく、技術力といった話を聞きますが、つまるところ、これは「人」です。この人的資源の強さが良い結果を招いたというのは確かでしょう。しかし、それが能力的な違いによるものかと言われれば、それは、NOです。何故なら、人という基本性能は何一つ変わっておらず、昔の人が優秀で今が劣っているということも学術的にも言えないからです。ただ、ひとつ、違いという点では、働くことに対する意識は違ったと言えるでしょう。実は、ここを、この「働く」という文字を以て説明することができます。
実は、この「働」という文字、これは、国字です。つまり、日本オリジナルの漢字となります。実は、日本人にとって、「働く」ということは、「人が動く」ことを意味します。その語源は、定かではありませんが、一部には、大きな岩を複数の人間が助け合って動かす様を示したとも言います。要するに、日本では、人のために動くことを以て、「働く」としたのです。これは、個人よりも組織を以て世界に臨んできたまさに日本の強さそのものと言えます。そして、これが、本来、日本人の持つ「働く」という意識です。
しかし、中国では、この「人べん」はつきません。「動」のままです。そこには人がいません。自らの意志を以て動く。まさしく、スタンドプレーの強みをこの一字は示しています。無論、これは、優劣を語るものではありませんが、やはり、日本には、日本の強みというものがあったはずです。そして、それを日本は証明してきた。そんな事が言えると思っています。そんな日本も、近年は、実力主義にならってか、どちらかと言えば、「動」の考えを以て、仕事を求める傾向が強まりました。自己実現、自分のやりたい職業、自分、自分。でも、ここには、日本の強さはありません。この「人」という言葉の意味が、いつの間にか、消えてしまいました。でも、世の中をみて、今日の迷走ぶりに、このスタンドプレーが悪い方に働いていると考えることはできないでしょうか。自分が望む前に、人が望むことをする。日本独自の強みを、こうした先人の知恵は示している、そう思うのです。
(神社人運営者 株式会社カルチャージ代表 東條英利 )
東條英利氏・・1972年生まれ埼玉県出身、株式會社カルチャージ代表取締役。東條英機の直系曾孫にて、第18代目当主。日本独自の社会公益事業モデルを 模索し、神社並びに神道の存在に着目。神社を通じたカルチャー・ツーリズムを提唱し、新たな地域コミュニティと文化エンターテイメントの再生を目指してい る。
グローバルコミュニティー インタビュー 日本文化の根源は神社にあり
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