人間味
日中韓通訳者・張景子さんの多文化な視点
人間味
松本元復興担当相が発言問題で辞任を余儀なくされました。「知恵を出したところは助けるが、知恵を出さないやつは助けない」。「県でコンセンサスをとれよ。そうしないと、我々は何もしないぞ」。被災地を訪れた際に宮城県知事に向かって言い放った言葉です。
被災者の皆さんのために日夜奔走している知事に、これは酷過ぎました。あまりにも傲慢・冷徹で、人間味の欠片もみることができません。どんな有能な人物でも、人間味がなければ人間失格でしょう。ロボットのような仕事しかできないはずです。
人間味とは、人々への思いやりや優しさ。
知事の苦労や被災者の悲しみが念頭にあったならば、あんな発言はできなかったはずです。そうしたら、きっと知事の両手を握り締めて、「ご苦労さん!」と涙ぐんだことでしょう。
最近読んだ伊集院静氏のエッセーに「大人が葬儀でみせる顔」というタイトルがあり、葬儀の間中、「故人との思い出をずっと思い起こしておけばいい」と書かれてありました。そうすれば、自ずとその場に相応しい表情と行動ができるということでしょう。つまり、人の言動はその心が動かしているのです。
といっても、人間は時として、心にもないことを言ったり、あまり深く考えもせず、きれいごとを並べたりします。しかし、そういうものは、いざという時に泡となって消えてしまうのが常です。
就任当時、松本元復興担当相も、「私の心はただひとつ。被災者に寄り添うことだけ」と言ったそうです。本当にそう思っていたのか。「寄り添う」という言葉に本当に心を込めていたのか。あの言動をみれば、とても信じられません。もしかしたら、その場限りの言葉だったのかも知れません。
どうか、日本政府に人間味豊かな人が増えますように。少なくとも、復興担当相は思いやりや優しさという人間の基本を備えた人でありますように祈っております。
張景子さんプロフィール・・北京外国語大学 日本語・日本文学学科卒業・
元中国国際放送局(北京放送)アナウンサー
東京大学 大学院修士学位取得・博士課程修了
JCKフレンズ(日中韓関連事業)代表 立教大学 兼任講師
日中・日韓・日中韓3国の政府間交渉・民間交渉の遂次・同時通訳
NHKの中国語翻訳・ナレーション業務
東アジア評論家として「TVタックル」「太田総理」等の番組に出演
張景子さんの多文化コミュニケーションセミナー
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