平成20年、外国人登録者数は,約220万、日本の総人口の1.74パーセントを占め年々増加している。国際結婚は17組に1組、東京・大阪では実に、10組に1組が国際結婚だ。そこで、今回は、国際結婚暦20年以上で、国際結婚家庭のサポートのためのNPO多文化家庭支援センターを立ち上げた、エインズワース・千明さんのお話をお聞きした。多文化家庭支援センターを立ち上げた経緯は何ですか?国際結婚の間で生まれた子供たちの悩みを聞いているうちに、食事や言語の問題など身近なことでもどちらの文化を尊重するかという問題に発展していることがわかりました。そして、さまざまな多文化な家族を支援していくには、誰でもが共有できうる『家族とは何か』という疑問に答えることが必要だと実感しましたね。家族のあり方を考えようと、キリスト教、仏教、イスラム教などの文献にも当たりましたが、夫婦や親子のあり方の大切さを具体的に説く思想は見つかりませんでした。親子関係・夫婦関係について説いているのは唯一儒教の考え方だけでした。家族のあり方において、儒教の影響はお隣の韓国には根強く残っていますが、日本では近年廃れてきたように思います。しかし、西洋的な個人をあまりにも尊重する考え方は、国際結婚のカップルであっても、日本社会には合わないような気がします。
国際結婚カップルの子供たちの現状は?国際結婚カップルの子供たちは成長する過程で、いじめにあったり、疎外感を経験したりする子が多いのは事実です。まだまだ、少数派として日本の社会で生きていくのは大変なことが多いですよね。国際カップルの子供はその反動で外国のルーツを持つことに関して劣等感を持ってしまう子も多いし、そのことを忘れようとしてより日本人の血も受け継いでいることを証明しようとする子もいます。しかし、親の育て方によっては複数の文化を持つユニークな個性を肯定的にとらえて、日本人の社会でのびのびと活躍する子供たちも大勢います。大きくなるにつれてそのことを肯定的にとらえることが出来るようになって
行くようです。
多文化家庭支援センターでの活動は?家族とは、全く別の家庭で育った男性と女性が一つ屋根の下で,共同で築き上げて行くもの。同じ国どうしの人たちでも決して容易なものではありません。
まして言葉が違い、文化も違う二人が一つの家庭を築いていくのは決して簡単なものであるはずがありません。でも,ひとりで悩み続けても、一度もつれた糸は絡まっていくだけです。そこで私たちは、顧問を勤める臨床心理士の先生による多文化家庭の為のライフガイダンス等をもとにしたセミナーを以下のような内容で開催しています。
1:毎日の生活の中で起きる出来ごとへの悩みや不安の解消
2:異なる文化間でおこる葛藤の乗り越え方
3:実際に云うことを聞かない子ども達への躾の方法を具体的にペアレントトレーニングというかたちで紹介
また、国際カップルの子供たちの居場所を作ってあげようと、ファミリーキャンプ、ファミリーピクニックなどの活動も行っています。みんな普段は少数派として生きているので、同じ境遇を持ったものたち同士で楽しい時間を過ごすことで精神的にも安定するようです。日本で多文化家族が生活していくのは、簡単なことではありません。
しかし、日本人同士のカップルでは経験の出来ない楽しさもたくさんあります。
日本人が本当の意味で国際化していくには、異文化の人たちと文字通り家族や親戚になる必要があると思います。私たちのサポート活動は、本当に小さな一歩ですが、日本の社会においてはとても重要な活動だと思っています。
エインズワース・千明 氏プロフィール米国でアメリカ人男性と結婚。ジュエリーバイヤーなどの仕事に就く。1991年、帰国。夫とともに英会話教室を経営しながら、4人の男の子を出産。育児と家事をしながら、PTAや子供会などの地域のボランテイアから始まり、外国人や外国生活経験者らとホールサムライフを進める会」を立ちあげ、日本人の意識を国際化する活動を開始。2006年星槎大学共生科学科での、卒論「国際家庭のこどもたちの悩み」は日本の今後の共生社会への重要な提言として、教授達の絶賛を浴びる。2008年8月,首都圏の国際家庭の集り「International Family Association」を母体として、『多文化家庭支援センター』を発足させる。
国際結婚は苦労も多いけど楽しさも多い、日本が国際化していけばその子供たちの多様性も、将来は必ず個性として尊重される日が来ると思う。多文化家庭支援センターのような地道な活動がもっと多くの支援を得られるよう願っている。お勧めの一冊 家族の思想儒教的死生観の果実
加地伸行著《立命館大学教授》
血と生命の連続を核とする儒教的死生観こそ日本人の原感覚である、
という立場から、現代の家族をめぐる諸問題を明快に解きほぐす。
『儒教とは何か』『儒教沈黙の宗教』などの著書があり、独自の儒教研究で名高い著者が、祖先からの血の連続・生命の連続に最大の価値をおく儒教的死生観こそが、日本人の家族の思想の根本であり、日本人の拠り所とすべき精神であると論ずる。